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 それから間もなく住居は変わり転校先のT中学校へ顔見せの為、学ラン姿の俺は保護者同伴の元でやってきた。ここの町内は小学校の時点では二つの学区に分けられていて、中学進学の際に一つの場所へ通うシステムになっている。アルトの助手席から下り校舎に向かっていると、通りがかった生徒達が物珍しそうにこちらを眺めている。それには気にもせず叔母の後をついていきエントランスで靴をスリッパに履き替え、職員室に足を踏み入れると今度は教師達がさっきの生徒と似た視線を寄こしてきた。
 隣の応接間へと促され部屋に入り指示された椅子に腰かけると間もなく黄土色のスーツを着て眼鏡をかけた人物とグレーのカーディガンにスラックス姿の二人が机を挟み立つ。こちらも立ち上がり挨拶を交わし自己紹介が始まった。スーツ姿が教頭でカーディガンが担任になるとのこと。ほぼ同時に座ると一応の説明と軽い世間話がしばし続けられる。下を向き、とっとと終わらないかと当初から願っていた俺に話の矛先が向けられる。
「ところで君のその制服だが、わが校にはそぐわない物なので校則通りの身なりでお願いしますよ」
教頭はこの格好がお気に召さないらしい。この警告に(そんなつもりはさらさら無かったが)はい、と答えた。
「今現在、風紀を乱すような生徒は在籍しておりませんので保護者の方からも目を光らせておいて下さい」
不良と断言しないのがいかにも教頭と云った台詞の後は叔母に車で待ってて貰い、担任が教室を案内する事となる。渡り廊下を通り各学年の教室がある校舎に入ると自分の下駄箱の場所を教わり、その先の廊下を左に折れ六クラスある内のD組と記された教室の前まで来た。遠巻きの中に知った顔もありなんだか恥ずかしくなる。説明が終わり帰宅してよいと言うので気持ち頭を下げ帰ろうとすると、不意に肩を叩かれる。
「まるっきり不良になっちゃったね」
「フツーの小学生だったのにねぇ」
久しぶりに現れた人間の容姿がヤンキーになっていたコトにニヤけながら声をかけてきた俺よりデカい小坂美奈代と黒ブチ眼鏡の島田由理は以前同じクラスだった。
「うるせぇ」と返すが「キャーこわいっ」「ホントだねぇ」と互いを手のひらで叩きハシャいでいる。昔を知っている女子たちを前にしては不良の威厳もへったくれもないみたいだ。
「そのままのカッコで学校に通うの?」
由理が問いかけてきたので、そうだと返答すると、
「やだぁ、とうとうウチにも不良がいる事になるのねぇ」
と悩んだフリをする。そこで探ってみた。
「ホントにヤンキーいないのか?」
「憧れてまねてるカンジの子はいるけど」
教頭の言った通りでも無いらしい。次に美奈代が言う。
「学校に通い出したら大変なコトになるかもよ」
きっとそうなるだろう。既に注目の的になっている。ただし、悪い気はしない。話を切り上げるため「じゃ」と手を上げその場から離れる。
 職員室側の棟に戻り、スリッパを履き替え待機していた車に乗り込み校門を通りかけたその時、自転車置き場から二人の生徒がガンを飛ばしてくるのが見えた。ムカつく野郎共だ、と視界から消えるまでこちらもやり返した。

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